夏期休暇のお知らせ【地方出身の成り上がり〜渋谷ストーリーvol.1〜】

更新日:2021.12.28 公開日:2017.08.01

お知らせ

誰だって東京に憧れる、誰だって渋谷が好き、愛媛出身のシュンスケもそのうちの1人だ。
シュンスケは26歳の時に上京してIT企業を2社渡り歩き、32歳の時に独立した。
仕事にも仲間にも恵まれ37歳になった今、決して大きい規模ではないものの売上も社員数も中小企業の仲間入りを果たしたが、あくなき野望が更なる高見へと彼を前進させていた。

「そろそろだな」
シュンスケは仕事帰りにお気に入りのチルインでミントとブルーアップルをミックスさせたフレーバーのシーシャを吸いながらつぶやいた。
「そろそろですね」
シュンスケの会社で役員をしているエイジは繰り返すように相槌をうった。
歳は少し離れているものの、この2人は仕事もプライベートも良く一緒の時間を過ごしていた。だからエイジはこの時シュンスケが言おうとしていることがわかっていた。チルインの心地よい雑音と、お店の隅っこにおいてある珍しいマーシャルのスピーカーから流れるBGMが2人の会話の間を埋めてくれていた。
「次の…」
シュンスケが言おうとした言葉を遮るように、夏らしくノースリーブの青いワンピースを着た印象的な目をした女性が2人の隣の席に座った。そして間もなく女性の隣には対象的な格好をしたいかにもキャリアウーマンといった少し高めのヒールにタイト目なパンツスタイルのショートカットの女性が座った。
2人は自然とその女性に目を奪われていた。まるで言い出しかけたことがなかったぐらい自然に。

「アヤはどれぐらい?」
コンビニ袋からビールを取り出しながらキャリアウーマンの格好をした女性は言った。チルインは持ち込み自由だからこうして好きなものを買ってくる客は多い。
「まだわかんないけど良くても…。エリコは?」
ちょっと疲れているようにも困っているようにも見えるアヤの表情は服装とは逆に大人っぽさを感じる。
「うちは今年もないかな。まあ仕方ないよね。」
エリコはちょっと怒っているようにも諦めているような表情をしながら500mlの缶ビールを開けた。その豪快な行動からは想像出来ないぐらいエリコは幼い顔立ちだった。
2人は恐らく渋谷を歩いてすれ違ったら10人中10人振り返るであろう、誰がどう見ても美人だった。

エイジはそんな2人を見て服装と顔立ちが逆だな、と心の中で思っていた。
「社会人2年目ぐらいですかね」
エイジはシュンスケに問いかけるように言った。
「そうですね」
シュンスケはエイジの問いかけに答えるようにではなく、何か発せられた言葉に対しての返事をしたような感じだった。シュンスケが集中していない時は良くある。エイジもそれはわかっていた、シュンスケは今アヤとエリコに集中している。

「いーよね、ユイの会社はさ」
ビールを勢い良く飲んだエリコはそう言った。
「そうだね、同じ渋谷の会社とは思えない」
アヤも瓶のスミノフを飲みながら言った。
その瞬間、シュンスケが席を立って彼女たちの前に行き、彼女たちに言った。
「何が不満なのか教えてもらえませんか?」
エイジはその瞬間、つい先日スターバックスでスーツを着た男性に熱いプレゼンをしていた大学生ぐらいの男の子にも声をかけたという話を思い出した。シュンスケは疑問に思ったら聞かずにはいられない、そういう男だった。
「すみません、邪魔をしてしまって」
キョトンとする美人2人を目の前にナンパ目的でもなく、ただ話の要点が気になっただけで声をかける勇気があるならナンパした方がマシなのにとエイジは思いながらも、謝罪しながらシュンスケを引っ張って席に戻そうとしていた。
「・・・無いんです」
疲れているようにも困っているようにも見える、さっきと同じ表情でアヤは答えてくれた。少し酔っ払っている。
「え、何が?」
答えてくれると思ってなかったのでシュンスケより先にエイジの言葉が反射的に出た。
「休みですよ、夏休み」
アヤが答えたからか、エリコがやはり諦めたような表情でそれに対して返事をした。
シュンスケは色々聞きたいような表情を見せたのだが、一瞬考えて言葉を選んだ。
「うちで働きませんか?」

渋谷でこれから巻き起こるだろうストーリーを想像しながらエイジはチルインの店内でシュンスケの行動に少し顔がにやけてしまった。その表情は店内に立ち込める煙が包んだ。

▶NEXT:気が向いたら更新
対象的な服装と顔立ちのアヤとエリコ、戸惑う2人が出した決断

■夏季休暇による休業日
2017年8月11日(金)〜2017年8月16日(水)
お取引先の皆様には大変ご迷惑をお掛け致しますが、何卒ご理解・ご了承下さいます様お願い申し上げます。
8月17日(水)より平常通りの営業と致します。

             
EIJI YOKOYAMA

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EIJI YOKOYAMA

ウェブサークル取締役。2022年のテーマはストイック。日々ゴルフとトレーニングに励んでいます。採用強化中!気軽にTwitterでDMくださいー!

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